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魚沼の里にうまれてーおばあちゃんの思い出と「カチカチ山」

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おばあちゃん

私は子供の時、おばあちゃん子だった。彼女にとって私は最初の孫、それも農家の跡取りとしての大事な「あに」だったからで、私自身その記憶が残っている程度には" 溺愛"だった。
一つエピソードが有る。ふるさとでは大晦日の晩に「歳取り魚」と言って、塩引き鮭を大ぶりに切って食べる風習が有り、頭の方から、一の切れ、二の切れ......となるのだが、この時おばあちゃんは大事なあにに、一の切れを食わせるか二の切れを食わせるかで、多いに悩んだらしい。
位は高いが頭に近くて身の少ない一の切れか、位は譲って身の多い二の切れか、そのどっちをあにに食わせようかと言う、中々悩ましい選択を迫られた訳だ。

戦前の小作農の嫁の境遇などと言うものは、推して知るべしで、彼女も嫁入りの日まで自分の夫(つまり私のおじいさんだが)の顔も知らなかったと言う。

11人の子供を産んだのだが、生き残ったのが5人だけ、と言う事実だけでも当時の境遇が推測できるだろう。
一人は戦争に取られて死んだのだが、他の5人は「病気」と言う名の貧乏で死んだ。
病んでピーピー泣く子供を尻目に、蚕の世話から手が離せず、そのまま逝かせたとか、その遺骸に泣きすがった別の子も、又、死んでしまったとか、淡々と語るわが子の最後の話を思い出し、今私も多少は想像力をもって、無き祖母の思いに自分の思いを重ねることができる。

生きている間は医者は要らぬ、死んだらその証明書の為に医者が必要、と言う時代だったのだ。
孫の私を溺愛したのも、そうした自分の子供への、やりたくて出来なかった思いが有ってのことかも知れぬ。

30年程前にこのおばあちゃんが死んだ時、その実の妹が、仏壇に飾られた黒枠の笑顔の前に座り、「これでやっとお前さんも楽になったねぇ」と静かに語りかけていた。

孫の中で、長兄だけを溺愛すると言うオロカシサを持ちながら、祖母はとても利口な女性だった。屈託なくひらけた性格もあって、自然、集落内のばあちゃんたちのリーダー格になっていた。
他の私の親族については恨み事にこと欠かない私の妻も、このおばあちゃんにだけは、「若し生まれた環境が違っていたら、多分世界を見ながら生きる人だったね」と評していた。

子供の頃こたつで足に火傷をして(その頃のこたつは当然、炭こたつ)、その火傷跡が原因の皮膚ガンがあちこちに転移、70歳過ぎで死んだのだが、内臓も丈夫だったし屈託のない性格で、その病が無ければ100歳迄も生きたのに、と皆から惜しまれた。

ようやく我が家も多少は経済的にゆとりが出てきた、その矢先だったのに。

記憶力もトンデモナク達者な女性で、私は子供の時、毎晩のようにねだって昔話を語ってもらった。TVも無かった頃、私としては当時唯一と言えるエンターテイメントだった訳だ。

「鯖売りと弥三郎婆さ」だの「サルカニ合戦」だの、幾つも有ったのだがみーんな忘れてしまった。
その中で「カチカチ山」の話は、その残酷さと、これでもか、と言う執拗な復讐劇が印象深くて、今でもかすかに覚えている。

カチカチ山

囲炉裏切り絵-2[更新済み].gif「トンと昔が有ったと」から始まり「えちごさっけぇもうした(越後栄え申した)」で終わる話の、細かいニュアンスは到底伝えられないし、話の筋も一部記憶が途切れているが、兎も角話のあらすじだけでも追ってみよう。「トンと昔が有ったと.........、
 

☆「婆あ汁」

ジイさんが畑仕事をしていて、狸にからかわれる。
無視するふりをして、油断した隙に狸を捕まえ、家に持ち帰って縛りつけ、「今晩は狸汁だ」と言って、バアさんに米を搗いておく(精米、実際の話は餅つきだったか、その辺記憶が曖昧)ように言いつけ、又畑に行く。

言われた通りバアさんは、臼と杵で米を搗き始めるが、力が弱く中々はかが行かない。
それを見て狸は「俺が手伝ってやる」と、最初は用心していたバアさんを言葉巧みに騙し、縄を解かせる。
米を搗く振りをして、バアさんが臼を覗き込む時を見計らって、杵でバアさんを叩き殺す。

バアさんの肉で汁を作り、狸は手ぬぐいを被ってバアさんに化け、畑から帰って来たジイさんに、狸汁だと騙してその汁を食わせる。

※ 「肉が固いな」とか、「そりゃこう云うことだべ」とか、ジイさんと狸の間に2、3のやり取りがあって、これも話の残酷さを際立たせる、そう云う意味では大事なやり取りだった筈だが、忘れてしまった。

いい加減食べた後狸は手ぬぐいを脱ぎ捨て、「今お前が食った肉はバアさんの肉だ、骨は台所の棚の下に有る」と言って逃げ去る。

あまりの悲しさにジイさんが家で泣いているところに兎が通りかかり、事情を聞いて狸への復讐をジイさんに約束する。
ここから執拗な復讐劇が始まる。


 

☆カチカチ山の兎

狸が通りそうな道で、兎は薪刈りをしている。そこに狸が通りかかる。
「兎どん、何してるがだ?」「何しているどこの騒ぎじゃねぇ、今年の冬はことの外の寒さで、みんな凍え死んでしまう。おら一生懸命粗朶(そだ)を刈って、 冬に備えるだ」「兎どん、俺にも刈ってくれ」「とんでもない、そんな他人の分までやってる暇なんてねぇ」「そこを曲げて......」「じゃあ刈るだけ 刈ってやるから、粗朶を背負うのは、力のあるお前やってくれ」

思い切り沢山の薪を狸に背負わせ、兎はその上に飛び乗り、カチカチと火打石で薪に火をつける。
「兎どん、今の音はなんだ?」「カチカチ山のカチカチ鳥の鳴き声だ」。

そのうち薪に火が付き、ボウボウと燃えだす。「兎どん、今の音はなんだ?」「ボウボウ鳥の鳴き声だ」兎は飛び降りると、くぁらんくぁらんと逃げて行った。
 

☆蓼(たで)原の兎

背中に大火傷を負った狸が怒りに燃えて兎を探す。その目の前に件の兎が現れ、狸は兎を捕まえる。
「人の背中に火を付けやがって、勘弁ならん、殺してやる」
「何の話だ、俺は知らん。そりゃカチカチ山の兎だろう、俺は蓼原の兎でここから動いたことなんかねぇ」
「そうかあ?、お前に良く似ていたが......、ところでお前、ここで何している?」
「ひとつ向こうの山で大きな山火事が有って、仲間がいっぱい焼けっつり(火傷)になった。その特効薬の『蓼味噌』を作ってるがだ」
「なに? 焼けっつりの特効薬、俺にも塗ってくれ」
「やなこった、人を捕まえて勘弁ならんだの殺すだの。それでなくとも味噌は足らんってのに」
「悪かった、悪かった。曲げて頼む」
「じゃ少しだけだぞ」

兎は狸の火傷の背中に、ピリピリと辛い蓼味噌を思い切り塗りたくり、くぁらんくぁらんと逃げて行った。
 

☆竹原の兎

七転八倒の末にようやく蓼味噌をこすり落とした狸が怒りに燃えて兎をさがす。その目の前に件の兎が現れ、狸は兎を捕まえる。蓼原の前半と同じやり取りが有って、「ところでお前、ここで何している?」となる。


「何しているどこの騒ぎじゃねぇ。今年は今までにない凶作の上、冬は大雪だそうだ。食うものは何も無くなる。食わなくても良いようにけつの穴をこの竹で塞ごうと、丁度いい竹を探しているとこだ」
「俺にもやってくれ」「やなこった、人を捕まえて勘弁ならんだの殺すだの。それでなくとも自分のことだけで忙しいってのに」「悪かった、悪かった。曲げて 頼む」「じゃ細いやつだけだぞ」兎は思い切り太い竹を切って、狸のけつの穴に無理やり叩きこんで、くぁらんくぁらんと逃げて行った。
 

☆杉原の兎

耐え難い痛みを、これで冬を越せると我慢していた狸は、しかしそのうち、糞が出たくなって初めて騙されたと分かったが後の祭り。竹の栓が蓋をして糞が出ない。
あっちの木にこすりつけ、こっちの石にこすりつけ、やっとの思いで竹を外したが、けつは血だらけ、痔なんてもんじゃない。
おのれ、今度こそ勘弁ならん、と探す狸の前に件の兎が現れる。
同じ展開が有って、又もやコロッと騙された狸が「ところでお前、ここで何している?」となる。

「何しているどこの騒ぎじゃねぇ。今年は今までにない凶作だ。今から魚を捕っておこうと、杉の板で船を造ってるとこだ」
「俺にも作ってくれ」

「杉の板はもう無いから、粘土の船を作ってやる。その辺から土を集めてこい」と言って、狸に泥で船を作ってやる。
一緒に海に乗り出して、「狸どん、俺が『杉船はすーい』と言うから、お前は『ドロ船はぶくぶく』と合わせろ」
しばらくその掛けあいが有って、そのうち本当にドロ船はぶくぶくと沈んでしまい、狸は溺れて死んでしまう。

 

☆狸の「金玉」

兎はじいさんに復讐が終わったことを報告し、今度こそ本物の狸汁を肴に二人で酒を呑み交わし、したたかに酔っぱらった兎は、狸の金太をひもでぶら下げてフラフラと、自分の巣に帰ろうと歩き出す。

途中、眠くなった兎は、子供だけで留守番をしている家に入り、囲炉裏のやぐらに狸の金太をぶら下げ、「とと(父)が帰ってきたらこれで旨い狸汁でも作って食え」とからかって、自分は家の裏で寝込んでしまった。

帰って来た父親が、話を聞いて寝ていた兎を捕まえる。
子供に「しっかり持って離すんじゃないぞ」と兎を渡して、自分は兎汁を作るため包丁を研ぎにその場を離れる。

兎は子供に「ととの金太と狸の金太と、どっちがでかい? いくらととの金太がでかいったって、狸には負けるだろう」と挑発をかける。
「ととの方がでかい」と乗って来た子供に、「どの位でかい?」と聞くと子供は「この位でかい」と両手を広げて、兎を離してしまう。その隙に兎はくぁらんくぁらんと逃げ出す。

そこに帰って来た父親は「この兎め!!」と、研いできた包丁を兎めがけて投げつける。包丁は兎の尻尾に当たって、尻尾は根元で切れてしまう。

それで兎の尻尾は、今でも短いんだとさ。
.........えちごさっけぇもうした」

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