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鮭文化圏と、鰤文化圏

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ビールと朝顔.jpg

連日暑いですね。
亘の「暑中見舞い申し上げます」にあやかって私も、下手なイラストを一葉。

このくそ暑い中、大晦日の話から始めるのも何なんだが、『おばあちゃんの思い出』の中で、「ふるさとでは大晦日の晩に「歳取り魚」と言って、塩引き鮭を大ぶりに切って食べる風習が有り、」と書いた。しかし改めて考えてみると他人の食卓を覗いて確認した訳でもなく、若しかしたら年越しそばで大晦日を過ごす家庭も有ったかもしれない。
あくまでも「我が家では………」と、ここで訂正しておくとして………。

我が家で大晦日に鮭が食べられるようになったのは、これはもうハッキリした記憶は無いのだがおそらく私の小学校の低学年頃だったろう。家で鮭を買える程度の経済状態になったのか、就職していた叔父さんたちがお歳暮に送ってくれるようになった為か、そのどちらが早かったか、今となっては分からない。
その前はホッケだった。ホッケは大晦日に限らず日常的なおかず魚だったが、歳取り魚として膳に乗る時には切り身で無く1匹丸ごと付いた、と言うに過ぎない。尤もローソクホッケと言う小さなモノだったし、頭は外されているから、尾頭付きとは言えなかった。
当時おいらの学校の弁当のおかずは毎日ホッケだけ。だから今でもホッケには恨みが有って店頭に並んでいても買う気にならない。


それは兎も角、日本は例えば「鮭文化圏」と「鰤文化圏」とに分けることが出来るようだ。
その境界線は、太平洋側は知らないが日本海側は新潟と富山の県境と言うことになるだろう。
「糸魚川・静岡構造線」とほぼ一緒だと考えるなら、太平洋側も静岡辺りで切り替わるのだろうか。いや、あまりそう云う話は聞かないな。
しかし東北、特に蝦夷北海道ではアイヌの時からの鮭文化が続いている訳で、太平洋側にもやはりどこかで境界線が有るのだろう。
 

鮭文化圏

兎も角日本海側で見るならば、新潟県はハッキリした鮭文化圏だ。
特に村上市は三面川を遡上する鮭を使っての鮭文化で、全国的に名を馳せている。当地では鮭のことを「イヨボヤ」と呼んでいて、イヨボヤ会館なんてのも有る。

村上の鮭は村上藩の藩士たちの、言わば藩を上げての冬仕事から始まったらしく、同じ塩引きでも「武士としての作法」がある。
例えば切腹を厭う武士らしく、必ず腹の一部を残して切り開くし、つるす時も「首つり」に繋がると言うことで、頭の方では無く尻尾から吊るす。

冬になると良くTV等でも紹介され、既に全国的にも名の知られた村上の鮭料理の老舗、"喜っ川"で、何百本もの塩引き鮭がつるされている映像を見ることが有る。
あるじの吉川 哲鮏氏によれば、村上では鮭料理だけでも百種類を超えると言う。
「鮭の酒びたし」なんて絶品も有るし勿論塩引きも有名だが、私の好みから言わせて貰えば、村上の塩引きは少し乾燥が強すぎるような気もする。

鮭だけは振り塩ではダメで、塩に漬け込んだ塩引きで無いと味が引き出せない。以前同級生と話したことが有るが、塩引きの、あの塩のじゃりじゃりするような鮭をおかずに飯を食いたいなあ、と、魚沼もんの考えることは同じなんだなあと思ったことだ。今減塩志向でそう言う塩辛鮭は売っていない。

それに塩引きを焼いた時に旨いところが皮で、皮下脂肪とない交ぜになった味は何とも言えぬ。
これは私だけの好みでは無いらしく、伊達政宗も「1寸の厚さの鮭の皮を食わせてくれれば、伊達62万石と引き替えてもいい」と言ったらしいから、大方の好みなんだろう。
洋食でサーモン料理、例えばスモークサーモンの前菜等では、この皮をみんな剥いで提供し、皮は捨てる。勿体ないもんだと思ったことだ。

 

鰤文化圏

糸魚川の親知らずを挟んで隣は富山県だが(正確には親知らずを超えて、富山との県境の前に、市振が有るが)、富山の氷見港は、天然ブリ水揚げ日本一の港として知られているから、ここにきて鰤文化圏に切り替わると言っていいと思う。慶事に鰤を送る風習も有るとTVで見たことも有る。

金沢には「蕪寿司(かぶらずし)」と言う名品が有る。おそらく加賀百万石の歴史を背負った、鰤文化の象徴と言えるだろう。
蕪の間に鰤を挟み麹漬けにした、言わば馴れ寿しの一種と言えるが、確かに旨い。それに高い。
これも私の好みで言わせて貰えば、同じ麹を使った漬物でも、故郷の大根の鰊漬けの方に軍配が上がる。大根の鰊漬けは、お茶受けでも酒の肴にでも、鉢に一杯位は軽く食えるが、蕪寿しはやや上品すぎて甘く、バーやクラブの突き出しには結構だが、値段も張って多く食えるものではない。
 

鮭びいき

ここまで書いてきて、要するに私が言いたかったのは、我田引水ながら、鰤に比べての、日本における鮭の文化の深さだ。

鮭は勿論生のものを焼いたり煮たりすることも有るが、捕獲が季節に限定されることもあって、その保存方法のバリエーションが実に多彩だ。
最初は単に保存の為のノウハウだったのだろうが、結果的にそれが味覚のバリエーションに繋がっている。

塩引き(この中でも上で触れたように、甘塩だの辛塩だの様々。酒びたし等もその一つのバリエーションと言えるだろう)、燻製(つまりスモークサーモン)、様々な漬物(発酵食品)等など。

今、サーモンの刺身、それを使ったにぎり寿司等、至ってポピュラーなものになっている。アメリカあたりでは寿司ネタの一番人気らしい。
ただこれが出来るようになったのは最近のこと。川で採取される魚の宿命として寄生虫の危険が有った。
それが近年の冷凍技術の発達で排除(死滅)することが出来るようになったからで、「氷頭なます」など、名前がそのまま示すように、おそらく蝦夷のアイヌの人たちが冬に凍らせることで生食出来ることを、自然の中で発見したのだろう。

この鮭の、保存と味覚の文化の深さに比べれば、鰤なんか何だ。
鰤の照り焼き、うん、これは中々行ける。鰤大根、これも捨てがたい。なお娘によれば、私の作る鰤大根は「絶品」なのだそうだ。特に大根が旨い、と。

まっ、しかし鰤の味覚のバリエーションは、殆ど調理方法の違いだよな。後は蕪寿しに見られる発酵程度か。
鰤もいい魚だし、新潟港にも鰤は上がる。氷見程ではないが新潟の寒ブリも知られている。
しかしやはり選べと言われたら、新潟生まれの私は、鮭に断然一票挙げたい。刺身だけは「サーモンの刺身」よりは「寒ブリの刺身」を取るとしても。

ところで私のお祖父さん(ばあちゃんに比べて存在感が無かったなあ。囲炉裏の横座の住人、と言う以外には)は、鮭が大好物でいつも「アジ」と呼んでいた。
「鯵(あじ)」と言う魚は別にあって、それはそれとしてとても美味い魚だが………。
北海道でも鮭のことを「秋あじ」と呼んでいるようだが、なにか語源的な因縁が有るのだろうか。


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