故郷を離れて既に40年 東京・武蔵野の水辺を中心とした身近な風景と駄文を発信します

方言シリーズ第四弾(ムセェ)

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ムセェ

ツツと同じく、地域的にどの範囲まで通用するものか分からないが、故郷には「ムセェ」と言う言葉が有る。ツツと違いムセェは、私が未だ家にいた頃には普通に使われていたし、多分今でも残っているんじゃないかな。
「むさい」と言う言葉は共通語としても有って「爺むさい」等の言い方で、「汚らしい」と言った意味で使われる。若しかして語源的に根元で繋がっているのかも知れないが、わが故郷の「ムセェ」の意味はそれと若干違う。

「ムセェ」の意味は、(多すぎて)「うんざりする」とか、「持て余す」と言ったところ。
畦草刈りや畑の草むしりで、中々終わりが見えない時、腰を伸ばしながら「えーィ!ムセェなあ」等と嘆息する。
この辺、共通語の「むさい」と共通していなくもない。しかしわが「ムセェ」は、これから述べるように中々味の有る言葉なのだ。

 

同じうんざりでも………、

実はこれを書きながら改めて思ったことだが、多すぎてうんざりするとは言っても、例えば今回の東日本大震災や津波での瓦礫を前にして、「ムセェなあ」と言うかどうか?、多分言わない。
うんざりとは言ってもそこには一応、やり切ることを前提にしたうんざりなのであって、「ムセェなあ」と言う時のうんざりには、暗黙のうちに或る種の余裕が含まれている様に思う。と言うより、やり切らなかったら百姓を続けて来れなかった訳で、それをやって来た長年の経験に裏打ちされた見通しに立ってのうんざりだと言っていいだろう。

自分の力ではどうにもこうにも太刀打ちできない、本当に切羽詰まった状況に対して「ムセェ」は少し場違いと言うか、違和感が有るのだ。
使って間違いと言うことではないだろうが、東日本大震災の瓦礫を前にしてムセェは、多分………、口から出ない。
このことは、ムセェの次の使い方からも汲みとることが出来よう。

 

持て余しつつも………、

住宅の建前やそれに先立つ解体作業(屋こぼし)や石ばかち(土台固めの作業)など、かっては隣近所、親類などが応援に頼まれ「お互いさま」で駆けつける。こう云うことは地域共同体ではかって普通に見られたことだ。今はみんな勤めに出ていて、それを休まなければ駆けつける訳に行かないし、頼む方もそれが分かっているから気兼ねせざるを得なくなっているが………。
お互い様だから特に日当などは出ない。だが代わりに昼食、夕食の賄いは付いた。この準備も又、近所や親戚のカーチャンたちが馳せ参じてやるし、食事時はこのカーチャンたちのお給仕で食べることになる。
で、お代りをする時に「チョッとだけ」とか「半分でいいから」とか言いながら茶碗を出すことが有るのだが、給仕の方は委細構わず山盛りにして出すことが多い。給仕側とすればそれが一種のもてなしでも有かのように。昔は腹いっぱい食うと言うこと自体、ご馳走の時代が有ったのだろう。

その山盛りの茶碗を「こりゃ、ムセェなあ」とか言いながら受け取る訳だが、この時の「ムセェ」に持て余すの意味は有っても、うんざりの気持ちは当然込められていない。
確かに持て余しながらでも、全部食べきることを前提にした、相手のねつさ(丁寧さ)の気遣いに対して、それを汲んでのムセェなのだ。そこには恐縮の意味さえ込められている。

しかしこれも今改めて考えてみると、魚沼以外の世間で、他人から山盛りのご馳走をふるまわれて、恐縮の意味を込めて「こりゃ、ムセェなあ」なんて言ったら、「折角ご馳走してやっているのに、ムサイとはなんだ!!」と怒鳴られるかも知れないなあ。「おまえ」と同じ誤解をうみかねない。
取りあえずは「うんざりする」場面に限定して使った方が無難なようだ。

そう云う誤解には気を付けながら、しかし「多すぎる」「持て余す」「うんざりする」だけでは汲みつくせない、微妙なニュアンスを含んだこの味の有るムセェを、ツツと同じくやはり後世に残したいものだと思ったりしているのだが………。

 

誰も知らない

1年に1回程のペースでやっている関東地区の中学同級会で、去年、方言が話題となった。
ご多分にもれず、先輩や上司に向かって「おまえ」呼ばわりし、殴られたとか殴られそうになったとかの、既にパターン化した話、いわば「魚沼都市伝説」の他に、ツツも、そしてこのムセェも話題になった。と言うかどちらも私が話題に出したのだが………。

この時全く予期しないことが起きた。
実は20人前後の出席者の中で、私以外ムセェを知っている者が殆ど居なかったのだ。これには本当にびっくりした。
地元故郷ではツツより長生きしている言葉で、若い人はいざ知らず我々の年代では現在も使われているんじゃないかと思う。つまり地元では至ってポピュラーな言葉の筈なのだ。
そのムセェを、ツツでさえ覚えている同じ同級生が、殆ど知らないとは。

 

さすがカツヨシ

ビックリして「何故?」「エッ、ホントーに知らないの?」と不思議がる私に向かって、カツヨシがこう言った。
「それは多分、仕事言葉なんだろう。だから大人になって使う言葉で、我々はその言葉を覚える前に故郷を出て来たんだと思う」。
さすがカツヨシ!、中学の時の知能テスト学年一位はダテじゃ無かった。思わず膝を打って納得した時には、カツヨシへの敬意も含め涙さえ出そうな気分だった。
言葉と言うものの、生きた姿を垣間見たような思いがしたものだ。

 

「雄の話はムサくていかん」等と言われないうちに退散しようと思うが、あなたもこの「ムセェ」で、東京人を煙に巻いて見ようとは思いませんか?
……ん、うんざりされるだけだって?

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コメント(1)

確かに、子供の頃は「ムセエ」とか「ムサイ」などと、言ったり言われたりした記憶はない。

カツヨシの言う通り、社会に出て初めて聞いた言葉だろう。
「ムサイ」とか「ウザッテー」とか、あまりいい意味では使われないのだが・・・

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