春がきた
雪の下から最初に顔を出すのは、屋敷周りではアサズキ、小川のほとりや田の畔ではフキノトウ。
その田んぼにカエルが卵を産む。
卵はゴマ粒ほどの大きさで、ゼリー状の袋に収まっている。
さわるとぬるぬるする。 この感触・・・
気持ちいいやら 悪いやら。
田始めや
桜にさきがけてコブシが咲く。これが農作業をスタートさせる合図。そのことからコブシの別名を「田うち桜」というそうだ。
米作りは、ここから晩秋までかかる長丁場。
まず最初にすることは八海山に向かって一礼。そうして身心を清め、かつ引き締める。
田始めや 八海山に一礼し(泰孝)
いいねえ。本当にいい句だねえ。
私がこの句碑を見つけたのは、へんぞの新田堀(しんでんぼり)ぞい。
田起し
代(しろ)っかき
時代の違うイラストを並べて申し訳ない。
これだと田起こしを耕運機で、代っかきを牛でやるのかと思われそうだが、そうではない。
その昔は田起こしも代っかきも牛馬。耕運機が入ってからは両方とも耕運機。ま、昔の人ならみんな知っていることではあるが・・・。
鼻かんに棒をつけ、牛馬を先導する役を「はなっとり」といい、中学生くらいになるとこの役をおおせつかった。
田植え
苗代づくりを終えて、いよいよ田植えが始まる。
田植えは一家総出の大仕事。
子供も貴重な戦力。そのため学校も農繁期休業になった。
田んぼの中には吸血鬼ヒルがいた。こんなもんに吸いつかれたらとんでもないことになる。それにしても・・・
腰が痛えなあ。
どっぴら山水鏡
たっぷりと水をたたえた田んぼに堂平山がさかさに映っている。
でも、これは現代の風景。
柿に白い花咲く
この季節になると
タガドンの柿の木に白い花が咲いた。
柿の開花期間はごく短く、数日で落花した。
近所の女子(おんなっこ)が、よくこれを拾い、花輪や王冠を作って遊んでいた。
なお、タガドンとは屋号で、わが実家(デンベ)のお隣さん。そのまたお隣さんが雄の実家(マタエンドン)。
ぼこさま(蚕)
田植えが済むと、今度は養蚕だ。農家の数少ない現金収入。
それで、このぼこさま、虫のくせしてイッチョーマエにクソをこく。家じゅうクソだらけ。
油断していると、それを裸足で踏みつける。つぶれて足の裏へ、へばりつく。
たまったものではない。
田の草取り
田植えの後も水の見回り、追肥、田の草取りなどの仕事があった。
ことに難儀だったのは、田の草取り。梅雨時は雑草がどんどん伸びる。
中休み
中休みに妹の守りをしていたアンネ(長女)が、乳を飲ませにやってきた。
後ろでトト(親父)が歯クソをほじっている。
半夏生(はんげしょう)
ドクダミの仲間で葉が半分白い。そのことからカタジロ(片白)ともいう。半夏のころ花を咲かせる。
半夏とは昔の暦で、夏至(げし)から数えて11日目。今年は7月2日になる。
7月2日以降に植えた苗は収穫が半分になる。だからここまでに田植えを終わらせましょう。
ということだが、今は田植えそのものが1ヶ月ほど早まっているし、諸々の作業が機械化されていてあっという間に終わる。
だからこの花が咲いても誰も目もくれない。
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